いつのまにか40代

40代 男性 日常や思い出

チップスター空き箱の正しい使い道

もう20年以上前の話しですが、高校卒業後の就職先での新人研修期間中の話しです。

 

新人研修は、同時住んでいた田舎の県から遠く離れた某県の研修センターで2ヶ月間の寮生活をしながら行われるものでした。

 

18歳で大人ぶってはいたが、親元を離れて暮らす事に正直不安で心細かった事を覚えています。

 

研修センターと寮は併設されていて、綺麗な建物でした。 

寮生活は2人1部屋となり、ファーストインプレッションの際

 

どんな相手だろうか? 気の合う相手だろうか? 

 

等、期待と不安が入り混じった複雑な心境だったが、いざ扉を開けるとめちゃくちゃ普通の真面目そうな青年がいた。

 

お互い若干緊張した笑顔で簡単な自己紹介をして、これからよろしくと挨拶をした。

 

相手は自分の事をどう思っただろうか? ハズレだと思われただろうか? 

 

正直言うと、自分はややハズレだと思った。ゴメン! 

 

同室の彼は嫌な所が特に見当たらない、本当に普通に良い人だった。 反面、面白味に欠けてい部分があったのは否めない。

 

お互い若干気を遣い合うルームメイトという関係になった彼とはそれ以上仲良くなる事も無く、研修が終わって寝るまでの自由時間は仲良くなった同僚の部屋に行き、寝る時だけ自室に戻る生活を続けていた。

 

はじめての週末の休み、私は仲良しの同僚と買い物に行く予定だったので、同室の彼に出掛ける旨を伝えて、彼に週末何をするのか聞いてみた所、

 

「日曜日は教会にミサに行くんだ。僕はクリスチャンだからね」

 

と、予想してなかった答えに若干戸惑いつつも、心の混乱を悟られぬ様に、

 

「へぇー、そうなんだ」

 

と普通に相槌を打って、会話を終わらせた。クリスチャンに出会った事も無ければ、キリスト教の事も何一つ知らなかったので、話しを続けようもなかった。

 

そしてなんだかんだと寮生活の日々を送ってるうちに、日々着実に蓄積していくSey York(性欲)

 

皆、持て余してるSYを同室の相手と話し合って、OT(オ◯ニータイム)を設置する事により解消していた。

(OT中、相方は部屋を出て相手のOTが終わるまでは決して部屋に戻らない鉄の掟)

 

私も同室の彼とOTについて熱い議論を交わしたかったのだが、

ひょっとして彼の信じる宗教はOT厳禁とか厳しい規律があったりするだろうか? 等と股間を起立させながらも未知が故に相談出来ずにいた。

だってOTの相談した途端にキレられて説法とかされたら嫌やん。

 

そうは言っても日々募るばかりのSey York  溢れんばかりのSey York 

 

そんな悶々としたある日、部屋に戻ると同室の彼がクリスチャンのあの彼が部屋に居ないチャンスタイムが突如訪れた。

 

神様が与えたもうたこのチャンス、ものにしない手は無い。

オカズなんて必要無い、妄想だけでおかわりまでいけるぜ! 

私はさっとズボンを下ろし、OTに突入しようと思った矢先に、部屋にティッシュが無い事に気がついた。 

こんなタイミングで自分のずぼらな性格が仇になるとは、、、

 

神様から試された瞬間だった。

 

いつ同室の彼が戻ってくるかも分からない状況で、部屋の外にティッシュを探しに行くのはあまりにもリスキーであると考えた私は何かペーパー的な物は無いかと部屋を見渡した。

 

と、机の上に買い置きしてあったチップスターが目に入った。

 

これだ! これならすっぽり入る! 神様ありがとう!

 

私は左手にチップスターの空き箱を装備して、無事OTに突入する事が出来た。と思った矢先

 

ガチャリ!

 

OT突入と同時に、同室の彼が部屋に戻ってきたのである。

 

こんな時、下半身丸出しで左手にチップスター、右手にスティックを握った男がとれる行動はひとつだけである。

 

寝たフリ。

 

彼はベットで横になり、チップスターの箱とオチンを握ったまま寝たフリをするルームメイトを見て何を思ったのだろう?

 

私の憶測になるが、彼はきっと全てを悟ったと思う。

 

しかし、彼は私の寝たフリに対して気づかないフリで対抗し、私に背を向けて机に座っていた。

 

汝、他人のOTに遭遇する事なかれ。だ

 

部屋の中はピリついた空気が流れていたが、数分間寝たフリを続け、もう頃合いだろうと

 

「うーーん、おっ、帰ってたんだ」

 

と、今、目が覚めました! みたいな大根役者にも程がある演技をしつつ、神速でパンツとズボンをあげた。

 

彼も、

「ん? あぁ、寝てたんだ。」

 

と、とぼけた演技で気づいてないフリを続けてくれた。

 

彼の優しさには感謝しか無いが、もしあの時、

 

「いやいや、チップスターの空き箱は無いわ」

 

と言ってくれてたら、彼とはもっと親しくなれたかもしれない。

自分や相手が傷つく事を恐れてすぎて、本音が言えないと本当の仲良しになれません。 

恋愛も一緒。ここ大事な所です。

 

その後、下賤な私はこの話を鉄板ネタとして使いまくった。もし、逆の立場で私が発見者の方になっていたとしてもきっと周囲にヒソヒソ話していただろう。

 

しかし、彼はきっとこの話を誰にも言って無いと思う。彼は本当に上品で良い人だったからだ。

 

親しくはなれなかったが、善人の彼の人生には幸多かれと思ってます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

季節外れの恵方巻

2021年仕事初め

お世話になってる親会社に新年の挨拶に行った。

その日は親会社も仕事初めで、お昼に近所のお寿司屋さんから出前を取るので、一緒に食べて行けと社長から声を掛けて貰った。

 

ありがたい話しである。

 

正直、仕事初めの昼ご飯ぐらい1人で気楽にその辺で済ませたかった。食べたくも無い人間に高い寿司をご馳走するほど無駄な事も無いだろう。寿司屋の大将もサイゼリヤ行きたいと思ってる奴なんかに寿司を握りたくなかろう。

 

サイゼリアでドリアが食べたいんで要らないです」

 

その一言が言えれば、社長も無駄な出費が無いし、私自身も気楽に昼食をとる事が出来る。論理的なロジックで言えばそれが正解だろう。

 

しかし、私が勤めてる会社は最弱零細企業。モンスターに例えるならスライム。

 

遠慮して断って社長の機嫌を損ねたら、それだけで致命傷にもなりかねない。

 

コロナ禍で世間が大変な時に、コロナと全く関係の無い所でお寿司お断り倒産になってしまう。

 

長かろうが短かろうが巻かれる物には巻かれておけば問題ない。否定より肯定。

 

というわけで、ご馳走になる事にした。

 

 

親会社はワンマン社長率いる十数名の死んだ目をしたゾンビが働く紛う事なき中小企業。

 

そんな素敵な会社で真っ昼間から贅沢なお寿司をご馳走になる。新年早々、縁起の良い話しである。

 

ところが残念ながらその会社の人達はこぞって仲が悪い。個々に話すと主に仲間の悪口で軽妙なトークかますくせに、皆が集うと押し黙るという最悪のスキルの持ち主達だった。

 

この日もさほど広く無い会議室に十数人集まってるはずなのに、話し声ひとつ聞こえないじっとりとした静寂が部屋の中には漂っていた。

 

そんな空気を気にも留めない社長が新年の挨拶をかまし、それが終われば、いざ実食。

 

いただきますの号令と共に、皆は目の前に置かれたお寿司を黙々と口の中に運び込むマシーンと化して、会議室に小さな咀嚼音だけを響きわたらせていた。

 

恵方巻と勘違いしてるのだろうか? 

 

なんとも言えない雰囲気の中、部外者で下請けの私がこの空気を打破するしかない!

 

寧ろその為にここに存在してるのかもしれない。

 

妙な使命感にかられ、雰囲気を和らげるべく皆に話しを振ってみるが、どいつもこいつもスルースキル発動。

 

社長のみレスポンス有りだが、残念ながら貴方のターンは白々しい新年挨拶で終わりです。

 

従業員の皆さんにsay!hoo〜 とシグナル送っても返ってくるのは咀嚼音だけ。喋れよ!

 

埒が開かないので、寿司桶の中にいる玉子の握りを箸で摘んで、

 

私「美味しそうなブリですね! 富山県産ですか?」

 

一同「、、、、」

 

本当に気絶するんじゃないかってレベルで滑りました。顔が赤くなるんじゃ無くて、血の気がひいて真っ青になってた思います。

 

あそこまで滑るのは身体に悪いですね。

 

新年の滑り出しから失敗はしましたが、毎日を着実に歩いていこうと思います。

 

後日、その会社の従業員 Mさん(52歳独身)から

 

M「あの時、作業服と同じぐらい顔が青くなってたぞ、ハハハ」

 

と小さく笑われた後に

 

M「まぁ、その姿はちょっと面白かったよ」

 

と言われました。