いつのまにか40代

40代 男性 日常や思い出

季節外れの恵方巻

2021年仕事初め

お世話になってる親会社に新年の挨拶に行った。

その日は親会社も仕事初めで、お昼に近所のお寿司屋さんから出前を取るので、一緒に食べて行けと社長から声を掛けて貰った。

 

ありがたい話しである。

 

正直、仕事初めの昼ご飯ぐらい1人で気楽にその辺で済ませたかった。食べたくも無い人間に高い寿司をご馳走するほど無駄な事も無いだろう。寿司屋の大将もサイゼリヤ行きたいと思ってる奴なんかに寿司を握りたくなかろう。

 

サイゼリアでドリアが食べたいんで要らないです」

 

その一言が言えれば、社長も無駄な出費が無いし、私自身も気楽に昼食をとる事が出来る。論理的なロジックで言えばそれが正解だろう。

 

しかし、私が勤めてる会社は最弱零細企業。モンスターに例えるならスライム。

 

遠慮して断って社長の機嫌を損ねたら、それだけで致命傷にもなりかねない。

 

コロナ禍で世間が大変な時に、コロナと全く関係の無い所でお寿司お断り倒産になってしまう。

 

長かろうが短かろうが巻かれる物には巻かれておけば問題ない。否定より肯定。

 

というわけで、ご馳走になる事にした。

 

 

親会社はワンマン社長率いる十数名の死んだ目をしたゾンビが働く紛う事なき中小企業。

 

そんな素敵な会社で真っ昼間から贅沢なお寿司をご馳走になる。新年早々、縁起の良い話しである。

 

ところが残念ながらその会社の人達はこぞって仲が悪い。個々に話すと主に仲間の悪口で軽妙なトークかますくせに、皆が集うと押し黙るという最悪のスキルの持ち主達だった。

 

この日もさほど広く無い会議室に十数人集まってるはずなのに、話し声ひとつ聞こえないじっとりとした静寂が部屋の中には漂っていた。

 

そんな空気を気にも留めない社長が新年の挨拶をかまし、それが終われば、いざ実食。

 

いただきますの号令と共に、皆は目の前に置かれたお寿司を黙々と口の中に運び込むマシーンと化して、会議室に小さな咀嚼音だけを響きわたらせていた。

 

恵方巻と勘違いしてるのだろうか? 

 

なんとも言えない雰囲気の中、部外者で下請けの私がこの空気を打破するしかない!

 

寧ろその為にここに存在してるのかもしれない。

 

妙な使命感にかられ、雰囲気を和らげるべく皆に話しを振ってみるが、どいつもこいつもスルースキル発動。

 

社長のみレスポンス有りだが、残念ながら貴方のターンは白々しい新年挨拶で終わりです。

 

従業員の皆さんにsay!hoo〜 とシグナル送っても返ってくるのは咀嚼音だけ。喋れよ!

 

埒が開かないので、寿司桶の中にいる玉子の握りを箸で摘んで、

 

私「美味しそうなブリですね! 富山県産ですか?」

 

一同「、、、、」

 

本当に気絶するんじゃないかってレベルで滑りました。顔が赤くなるんじゃ無くて、血の気がひいて真っ青になってた思います。

 

あそこまで滑るのは身体に悪いですね。

 

新年の滑り出しから失敗はしましたが、毎日を着実に歩いていこうと思います。

 

後日、その会社の従業員 Mさん(52歳独身)から

 

M「あの時、作業服と同じぐらい顔が青くなってたぞ、ハハハ」

 

と小さく笑われた後に

 

M「まぁ、その姿はちょっと面白かったよ」

 

と言われました。